消費税の実務のポイント

誤りやすい消費税の課税区分

誤りやすい消費税の課税区分

1.対象外と非課税の混同
固定資産の除却の仕訳は非課税ではなく対象外である。
固定資産除却損 100(対象外) / 機械装置 100(対象外)

2.課税仕入と課税売上の混同
機械、生物等を売却する場合、売却損が生じたとしても売却額そのものは課税売上である。(売却損=課税仕入ではない。)
また売却に要する手数料は課税仕入(課税売上のみに要する課税仕入)である。
①簿価1000の機械を税込880で売却し、手数料を税込で110支払う場合は次の通り。
預金   880 / 機械装置 880(課税売上)
 (内訳 機械装置800、仮受消費税80)
固定資産売却損 110(課税仕入) / 預金 110
(内訳 固定資産売却損 100、仮払消費税 10)
固定資産売却損 200(対象外) / 機械装置 200(対象外)
②簿価1000の機械を税込1320で売却し、手数料を税込で110支払う場合は次の通り。
預金   1320 / 機械装置 1320(課税売上)
 (内訳 機械装置1200、仮受消費税120)
固定資産売却益 110(課税仕入) / 預金 110
(内訳 固定資産売却益 100、仮払消費税 10)
機械装置 200(対象外)  / 固定資産売却益 200(対象外)

3.売上割引、仕入割引
売掛金、買掛金の期日前決済により利息をやり取りする場合、営業外損益処理するが、
売上割引の支払は売上対価の返還(売上割引又は支払利息100、仮受消費税△10)、
仕入割引の受け取りは仕入対価の返還(仕入割引又は受取利息100、仮払消費税△10)として取扱う。

4.借り上げ社宅の使用料、社宅の修繕費・仲介手数料
借り上げ社宅は家主と会社、会社と社員との契約なので、社員から徴収する使用料は預かり金ではなく福利厚生費の戻りとして消費税は非課税売上として処理する。社宅の修繕費・仲介手数料は非課税売上のみに要する課税仕入として処理する。

消費税の仕入控除

課税期間の課税売上高が5億円超の場合、仕入税額について全額控除が認められず、仕入税額について個別対応方式あるいは一括比例配分方式による控除額計算を行う必要がある。通常の場合個別対応方式が有利である。
個別対応方式による控除額=課税売上のみに要する課税仕入に係る消費税の全額+課税売上、非課税売上に共通する課税仕入X課税売上割合
一括比例配分方式による控除額=すべての課税仕入に係る消費税の合計X課税売上割合
なお下記の区分例は営業部門で延払売上などによる受取利息、受取地代などの非課税売上が計上されない場合である。
仕入割引は受取利息表示したとしても課税仕入のマイナスであり非課税売上ではない。
売掛金の入金遅延で延滞利息を徴収すれば非課税売上になるが。

1.課税仕入が3区分されているシステムの場合(TKC、勘定奉行など)
仕訳ごとに税区分を判断し入力する。
TKC   勘定奉行
5    仕   課税売上のみに要する課税仕入(仕入、原価、営業関係経費)
6    シ   非課税売上のみに要する課税仕入(社宅の仲介手数料、社宅の修繕費)
7    共   課税売上、非課税売上に共通する課税仕入(管理関係経費、社長経費)

2.3区分のないシステムにおいて勘定科目で区分する場合(仮払消費税の勘定科目別計上額が集計可能な場合のみ、SAPなど)
仕入、原価諸掛、販売費 ・・・・課税売上のみに要する課税仕入
社宅仲介手数料、社宅修繕費(個別に控える)・・・非課税売上のみに要する課税仕入
一般管理費、固定資産・・・・・・課税売上、非課税売上に共通する課税仕入

3.3区分のないシステムにおいて計上部門で区分する場合(仮払消費税の部門別計上額が集計可能な場合のみ)
営業部門・・・・・・・・・・・・課税売上のみに要する課税仕入
社宅仲介手数料、社宅修繕費(個別に控える)・・・非課税売上のみに要する課税仕入
管理部門・・・・・・・・・・・・課税売上、非課税売上に共通する課税仕入

4.上記のような区分ができない場合及び控除不能額が大きくない場合
申告時に一括比例配分方式を選択する。一括比例配分方式は2事業年度継続する。

控除不能仮払消費税の計算

1.TKCのFX2における控除不能仮払消費税の計算方法

課税売上5 億円超の場合、仮払消費税が全額控除できず控除不能仮払消費税が生じます。
これは3 月決算において租税公課に振り替える必要があります。
(計算方法)
FX2のメニュー51課税区分別取引を開けます。
画面に課税売上割合(概算)が表示されるので、1-課税売上割合=非課税売上割合①を求めます。
同じ画面の7課税・非課税売上に共通する課税仕入の合計(税抜き)欄の数字②
6非課税売上のみに要する課税仕入の合計(税抜き)欄の数字③をひろいます。
控除不能仮払消費税は次の計算で求められます。
②x消費税率10%x①+③x消費税率10%
この金額を次の仕訳で租税公課に振り替えてください。
課税区分0 6221 租税公課/1164 仮払消費税 1164
仮払消費税の残りの金額は2136 未払消費税に振り替えてください。(未払消費税がマイナスになる場合は1154 未収入金に振替ます。)

2.控除不能仮払消費税のうち税務上の交際費に係る部分の計算

控除不能仮払消費税のうち税務上の交際費に係る部分は、法人税の申告書においては交際費扱いする必要があります。
控除不能仮払消費税のうち税務上の交際費に係る部分の金額は次のように求めます。
メニュー41仕訳帳を開き、条件検索のボタンを押します。
年月日 ○○ 年4 月1 日から○○ 年3 月31 日
課税区分 7(共通課税仕入れ)
科目 6223 交際費
(口座名)A税務上の交際費 に指定しOKボタンを押します。
条件に該当する仕訳が表示されますので、印刷ボタンで印刷します。
仕訳の合計x10/110あるいは( )内の消費税を合計し税務上の交際費に係る課税区分7で計上された消費税④を求めます。(マイナス計上あるいは貸方計上がある場合は要注意)
④x①非課税売上割合で求めた金額を税務上の交際費に加えることになります。
交際費で課税区分6(非課税売上のみに要する課税仕入)で計上されるケースはないと思いますが、あれば課税区分6の仕訳も検索する必要があります。